Periodontal Syndrome( 英語表記 )

歯周炎・歯肉炎など歯周病の症状があり、なおかつ、糖尿病・動脈硬化など歯周病と関連する全身疾患がある状態。近年、歯周病との関係性が指摘されている全身疾患及び歯周病に罹患している状態をいう。

早産、低体重児出産があり、歯周病に罹患した状態もペリオドンタルシンドロームであると考える。

日本語名:歯周病関連全身疾患症候群

歯周病に影響のある疾病の総称として使用し、歯周病が影響をおよぼす疾病と 歯周病に影響およぼす疾病の双方を含む概念で医学的定義ではない。

ペリオは歯を意味しドンタルは周りを意味しています。歯の周りに関連したシンドローム(症候群)という意味です。

歯周病と関連して発症する全身疾患を、本来、医科と歯科で分離して治療するなど、連携が手探り状態だったのを、歯科医師若林健史(歯周病専門医・指導医)が発起人となり、日本臨床歯周病学会を中心に、医科歯科の垣根を取り払った視点で治療を考える意味で提唱した。

wiki:ペリオドンタルシンドロームより抜粋

ペリオドンタル・シンドローム(英: Periodontal Syndrome)とは、歯周病と同時に歯周病に関連するとされる全身疾患がある状態をいう。日本語に訳すと歯周病関連全身疾患症候群。単にペリオとも呼ばれる。
以前より、歯周病は糖尿病の合併症とされていたが、昨今、糖尿病以外にも、狭心症・脳梗塞脳血管障害脳卒中・動脈硬化症・誤嚥性肺炎・骨粗鬆症などが、歯周病の影響により重症化するとされるエビデンスが多数でてきた。早産・低体重児出産があり、歯周病に罹患した状態もペリオドンタルシンドロームであると考える。

商標出願済み:ペリオドンタル・シンドローム(登録番号第5927832号・出願番号商願2016-79709・出願人:特定非営利活動法人日本臨床歯周病学会)

歯周病と疾患の関係について

( 糖尿病 )とうにょうびょう

血糖値やヘモグロビンA1c(HbA1c)値が一定の基準を超えている状態をさす疾患です。糖尿病の人が歯周病に多く罹患していて、しかも重症化しやすいことは以前からわかっていました。

糖尿病の罹患期間が長いほど、歯周病の罹患率も高く、血糖コントロールの良くない人と歯周病の重症化に関係性が見られたので、歯周病は糖尿病の合併症と考えられてきました。

日本歯周病学会:糖尿病患者に対する歯周治療ガイドラインより抜粋

糖尿病患者と非糖尿病者の歯周組織の状態を比較した研究を抽出した。2型糖尿病を高い頻度で発症するピマインディアンを対象に2年間隔で歯周病の新規発症率を6年間調べたところ、2型糖尿病患者は非糖尿病者に比較して、歯周病発症率が2.6倍高いことが報告されている。

わが国において、健診受診者5,856人の5年間の歯周病所見の変化を調査したところ、HbA1c(NGSP)≧6.5%の健診受診者150人がCPIコード3または4になる相対危険度は性別、年齢、喫煙、BMIで調整後、HbA1c<6.5%の被験者群の1.17であった。

台湾での2003から2006年の住民歯周病健診受診者の研究によると、35~44歳の2型糖尿病患者では歯周病有病率が10%以上高く、歯周病リスクに対する調整オッズ比は1.34であった。

要約しますと、2型糖尿病を発症しやすいピマインディアンを対象に調査したところ、2型糖尿病患者の歯周病発症率が2.6倍であった。以下引用は2型糖尿病について、1型糖尿病の多くは10代に発症し、インスリンの分泌が極度に低下する、もしくは、ほとんど分泌されなくなるため、インスリン注射などの強力な治療を常に必要とすることがほとんどとなる糖尿病である。

Wikipedia:2型糖尿病より抜粋

2型糖尿病の1番の原因は肥満と運動不足である。人によっては遺伝的になりやすい場合がある。糖尿病の約90%が2型糖尿病であり、その他10%は1型糖尿病と妊娠糖尿病である。1型糖尿病は膵臓にてランゲルハンス島が分解され絶対的インスリン不足になる病気である。

つまり、糖尿病に罹患している方は、歯周病の罹患率が高く重症化する傾向がある。血糖コントロールがうまくいかない患者さんほど重症度が高く、より進行するリスクが高い。また、重度の歯周病を放置しておくと、糖尿病の血糖コントロールに悪影響を与える。

歯周病に罹患している2型糖尿病患者さんが、歯周病治療を行うとHbA1cが改善する可能性が高い。

8020推進財団指定研究事業報告書:2型糖尿病患者と歯周病との関連研究より抜粋

結論の2
歯肉溝滲出液中より検出された IL-1βの 量は、健常者に比較して糖尿病患者で有意 に多く検出された。一方、歯周ポケットの 深さの違いによる IL-1β検出量の比較では、健常者、皮下脂肪型糖尿病患者では差 は見られず、内臓脂肪型糖尿病患者におい て深い歯周ポケットから有意に多くの IL- 1βが検出された。

結論の3
健常者、糖尿病患者(内臓脂肪型、皮下 脂肪型、含)の浅い歯周ポケットから検出 された IL-1βの量は、糖尿病の指標となる 糖化ヘモグロビン(HbA1C)と明らかな 相関を認めた。

 

( 狭心症 )きょうしんしょう

心筋梗塞といった心疾患患者のアテローム性プラーク(血管沈着物)を調べてみると、そこに歯周病菌が存在している事が判明しました。つまり、歯周病に罹患すると、新血管疾患が発症する可能性が高くなります。調査では、発症リスクは1.15〜1.24倍に高まります。

心臓に血液を供給する冠状動脈で血液の流れが悪くなり、心臓に障害が起こる病気の総称を「冠状動脈性心疾患」と呼びます。中でも、心筋梗塞や狭心症の虚血性心疾患は、心臓の冠状動脈にアテローム性プラーク(血管沈着物)が形成され閉塞されていくことで生じる病気です。血管内に侵入した歯周病原性細菌やその病原因子などが、血流に乗って冠状動脈に達するとアテローム形成が加速化。その結果、心血管の病気が発症しやすくなります。歯周病に罹患していると、心血管疾患の発症リスクは1.15〜1.24倍高まると言われています。 日本歯科衛生士会:歯周病と全身疾患との関わり「冠状動脈性心疾患」より抜粋

 

( 脳梗塞-脳卒中 )のうこうそく-のうそっちゅう

患者のつまった血管を調べると、やはり歯周病菌が見つかりました。虚血性心疾患や脳梗塞の発病率のほかに、血管壁の厚さを測定して動脈硬化の進行レベルをみる「IMT」という指標と歯周病を比較した場合においても、相関関係を示すデータが示されています。

歯周病とIMTのエビデンス

 

( 動脈硬化 )どうみゃくこうか

血管が硬くなる病気です。脂肪分の多い食生活、運動不足、ストレスなどの生活習慣が要因とされていますが、歯周病原因菌などの刺激により動脈硬化が発症することがわかってきました。動脈硬化の病巣から歯周病菌が検出される報告もあり、歯周病菌が動脈硬化の血管から見つかっています。

岡山大学:動脈硬化に関わる脂質代謝異常に歯周病が関連より抜粋

動脈硬化になると、頸動脈の内膜中膜複合体厚(IMT)が大きくなります。一方で、マウスへ歯周病細菌を感染させるこれまでの実験において、脂質代謝異常症が起こってLDL-Cの値が高くなることが報告されてきました。

また、口の中にポリフィロモナス ジンジバリス菌が多いとIMTが厚く、歯周病治療によってポリフィロモナス ジンジバリス菌が減ると厚かったIMTの厚みが減少したという臨床研究もあります。

 

( 誤嚥性肺炎 )ごえんせいはいえん

誤って食べ物が気道に入ってしまう事をいいます。歯周病患者が食べ物を誤って気道にいれてしまうと、歯周病菌も肺に入ってしまい、歯周病菌により肺炎をおこすことがあります。歯周病患者の誤嚥性肺炎の発症率は、口腔ケアあり11%、口腔ケアなし19%といった結果も出ています。つまり口腔ケアをすることで、誤嚥性肺炎の発生を42%減少させることができたのです。歯周病と誤嚥性肺炎の関係性があると考えました。

12ページのグラフ

8020財団:はじめよう口腔ケアより抜粋

 

( 骨粗しょう症 )こつそしょうしょう

骨の密度が低くなる病気です。また、歯周病も歯茎の病気ととらえられていますが、歯周病菌により歯槽骨が破壊され歯を失う病気ですので、本質的には骨粗しょう症と同じ骨の病気でもあります。

これまで、骨粗しょう症と歯周病の関係は、骨粗鬆症患者は、歯周病が悪化しやすい程度に考えられてきましたが、最近では、歯周病を治療すると骨粗鬆症が改善するという症例もみられる様になってきました。

 

( 妊娠性歯周炎 )にんしんせいししゅうえん

一般的に妊娠すると歯周炎にかかりやすくなると言われています。いわゆる妊娠性歯周炎です。これは妊娠中の女性ホルモンの分泌が乱れることで、Prevotella intermedia(プレボテラ・インターメディア)という細菌の活動が活発化することが関係しています。

妊娠中は、エストロゲンという女性ホルモンの分泌がPrevotella intermedia(プレボテラ・インターメディア)の発育を促進する働きがあるのです。その結果、歯肉の炎症を引き起こし、妊娠性歯周炎の発症となります。

妊娠性歯周炎患者で、歯周病治療を「行った」「行わない」この二つのケースで、低体重児出産の割合が5.4と20.7で、p値0.05以下ですので「その説明変数が目的変数の予測に本当に有効」とされています。

考察より)今回のロジスティック回帰分析結果より,CPI=3 (4 mm 以上の歯周ポケットを有する)の妊婦は,そう でない妊婦に比べて低体重児を出産する確率が 6.6 倍も 高いことが明らかとなり,歯周病と低体重児出産が関連 していることを示す結果が得られた.

妊娠期の歯周状態と低体重児出産のリスクに関する観察研究より抜粋

上記引用内「CPI」について、

地域歯周疾患指数(ちいきししゅうしっかんしすう、Community Periodontal Index:CPI)は歯周病に関する指数の一つ。

地域歯周疾患指数計測用に開発されたWHO型プローブを用い、プロービングを行う。

正常な場合をコード0、出血が見られる場合をコード1、歯石の存在する場合をコード2、4〜5mmの歯周ポケットが存在する場合をコード3、6mm以上のポケットが存在する場合をコード4とする。

コード1はブラッシング指導が、コード2、3ではブラッシング指導とスケーリング、ルートプレーニングが、コード4ではブラッシング指導とスケーリング、ルートプレーニングの上に歯周外科手術が必要であるとされる。

wikipedia:地域歯周疾患指数より抜粋

p値
https://bellcurve.jp/statistics/glossary/2172.html

上記p値は、単に引用するだけではなく解説できるようにしたい。

 

( 関節リウマチ )

歯周病とリウマチ(京都大学)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2015/documents/150413_1/01.pdf

約1万人の健常人を対象とした疫学 調査、および、京大病院リウマチセンターを未治療・未診断で受診した 72 名の関節痛患者の追跡調 査によって、歯周病の罹患が関節リウマチの発症に影響を与える可能性があることを示しました。

歯周病と関節リウマチには疫学的相関があることは昔から知られており、近年、特に注目を浴び ていますが、本研究はこれら 2 つの疾患の間に因果関係があることを示唆するものです。

歯周病 と関節リウマチとの関係が最近注目されています。関節リウマチ患者の約 8 割の血液中には、抗シトル リン化蛋白抗体(抗 CCP 抗体)という、シトルリン化という反応を経たタンパクを認識する抗体(血清 マーカーの一種)が検出されますが、この抗体はしばしば関節リウマチの発症に先立って検出されます。

また近年、歯周病菌の一種であるポルフィロモナス・ジンジバリス菌(ポルフィロモナス菌)が、現在 知られている中で唯一シトルリン化を起こす酵素を産生する細菌であることが報告されました。そのた め、歯周病の罹患が、この歯周病菌の持つシトルリン化酵素による過剰なシトルリン化を介して、関節 リウマチの発症に先立って検出される抗 CCP 抗体の産生を引き起こし、ひいては関節リウマチの発症に つながっているのではないか、と考えられるようになったのです。

京都大学:歯周病と関節リウマチ発症との相関を示すより抜粋

 

( アルツハイマー病 )

歯周病菌のアルツハイマー様病態誘発に関与する原因酵素を特定(九州大学)
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/141

 

(((こういった記事も)))
歯周病の女性、がん発症のリスク上昇
http://www.afpbb.com/articles/-/3137881

 

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