歯周病治療について、いまさら「知らない」「教えてほしい」とはなかなかいえない初歩的なことから、全身疾患との関連などの応用まで、多岐にわたる100項目をおよそ60名の執筆者が端的にまとめて解説した書籍です。
2018年3月1日デンタルダイヤモンド社より発売
以下は「刊行にあたって」より引用
「わかっていないのに、わかっているふりをしてしまう」
本書を手に取ったみなさんも、何かしら身に覚えがあるのではないでしょうか。 これは、引っ込み思案でシャイなわが国の国民性といえるかもしれません。
しかし、医療にかかわる者がわかったふりをして携わっていては、患者を快方に向か わせるどころか、病態の悪化、あるいは新たな医原性のトラブルを惹起する事態 にもなりかねません。 本書は、歯科医療のなかでも、とりわけ罹患率の高い歯周病をテーマとし、い まさら知らない、教えてほしいとはなかなかいえない初歩的なことから、知った つもりになっていただけで実は奥が深く、理解していない場合が多いことまで、 多岐にわたる100項目を集めました。
どの項目も端的にまとめており、診療の合間でも目を通せるように工夫しています。
昨今、歯周病が及ぼす疾病と、歯周病に影響を及ぼす疾病の双方を含む概念で ある「ペリオドンタルシンドローム」が注目されています。これは、医学的な定義ではありませんが、歯周病と糖尿病や動脈硬化などの全身疾患との因果関係が あきらかになりつつあるなか、医科と歯科がスムーズに連携するためのキーワー ドとなることが期待されます。
したがって、歯周病治療に関する知識や技術のアッ プデートは、われわれ歯科医療従事者にとって、いままで以上に欠かせないこと といえるでしょう。 本書が多くの歯科医療従事者に役立ち、患者の健康や笑顔へと繫がる一助にな れば、望外の喜びです。
2018年2月
若林健史/総監修
日本歯周病学会指導医専門医
サブタイトルにある『「聞かぬは一生の恥」とならないための全100項目を解説!』の通り歯周病治療の100項目を約60名の専門家が端的にまとめて解説した専門書籍。
現時点での歯周治療が整理され、基礎から応用の入り口まで、この本を手元に置いて、歯周病治療の際に指針となる本(現場歯科医師のコメント)。多くの歯科大学で教育や研究、治療にたずさわっている歯周病科の教授や講師、また歯周病専門医、認定医として現場で直接患者の治療にあたっている開業歯科医師、歯科衛生士が治療現場からの視点で書かれた本。
2018年5月1日に重版された。
目次
1章解剖・組織
健康な歯周組織[小方頼昌]
付着とは何か? その種類は?[小方頼昌]
1壁性、2壁性、3壁性骨欠損を知る[中山洋平]
歯肉の線維性と浮腫性の特徴[中山洋平]
加齢によって歯周組織はどう変化していくのか[小方頼昌]
歯肉退縮の種類 [目澤 優]
治癒形態を知る[小方頼昌]
2章診査・診断
初診時の診査項目[若松尚吾]
歯周病に関連する細菌検査[石原和幸]
デンタルX線写真はなぜ必要か [西島 泉]
デンタルX線フィルムの位置づけ [西島 泉]
口腔内写真はなぜ必要か[中舘正芳]
プロービングはなぜ必要か[稲垣伸彦]
動揺度・フレミタスの診査はなぜ必要か[稲垣伸彦]
フレアーアウトとは何か[江尻健一郎]
歯周病と??合の関係[富樫裕一郎]
エンド・ペリオ病変の診断のポイント[中村貴則]
歯周炎におけるリスクファクター[若松尚吾]
検査結果を患者に説明するカウンセリング[若林健史]
病名の種類[岡田祐輔]
3章歯周基本治療
①モチベーション
歯周病患者をやる気にさせるアプローチ①[飯野文彦]
歯周病患者をやる気にさせるアプローチ②[飯野文彦]
モチベーションの低い患者にどう対応し、説明するとよいか[安藤正明]
どのようにして患者のモチベーションを維持していくか[安藤正明]
②TBI
患者にセルフケアを勧めるコツ[石谷昇司]
禁煙できない患者へのアプローチ[石谷昇司]
患者に合わせたTBI のコツ [東 裕美]
患者に合った歯ブラシの選択 [東 裕美]
歯間ブラシが必要な患者、部位[片山奈美]
デンタルフロスが必要な患者・部位[児玉加代子]
ブラッシング圧の強さを抑えられない患者への対応[塩浦有紀]
電動歯ブラシを好む患者への指導[塩浦有紀]
嘔吐反射のある患者にTBI やSRP を行うコツ [片山奈美]
③SRP
どこにどのキュレットを用いるのか[高井英樹]
何㎜の歯周ポケットまでSRP で対応できるのか [中島啓介]
歯石はいつ取るのか[中島啓介]
オーバーインスツルメンテーションとはどのような状態で、どうすれば防げるか[中島啓介]
デリケートな前歯部へのスケーリングでの注意点[中島啓介]
プラークコントロールが不十分な状態でのSRP の効果 [臼井通彦 中島啓介]
ルートプレーニングとデブライドメントの違い[臼井通彦 中島啓介]
麻酔下・非麻酔下におけるSRP は、結果やリスクに影響を及ぼすか [臼井通彦 中島啓介]
デブライドメント・SRP の1歯あたりにかける時間 [臼井通彦 中島啓介]
超音波スケーラーと手用スケーラーによるSRP で、効果に違いはあるか[丸山昂介 佐藤 聡]
超音波スケーラーでのデブライドメントの際に表現される“フェザータッチ”とは [両?祐子 佐藤 聡]
SRP で滑沢にした根面は、そうでない根面より細菌が付きやすいか [石原和幸]
SRP 後の菌血症のリスクと予防法 [石原和幸]
SRP は動揺度が増しているときに行ってもよいか [高井英樹]
歯周基本治療後に歯肉退縮し、知覚過敏が生じた際の処置方法 [清水 豊 佐藤 聡]
歯周病患者への抗菌療法の適応症と投薬のタイミング[高塩智子 佐藤 聡]
薬液などを用いた歯周ポケット内洗浄は効果があるのか [目澤 優]
④骨欠損への対応
自然??出の促し方[斎田寛之]
LOT による骨欠損の改善 [斎田寛之]
⑤プロビジョナルレストレーションの活用
歯周基本治療中のプロビジョナルレストレーションの役割 [尾崎 聡]
暫間固定による連結の範囲[猪狩寛晶]
治療用義歯を用いた??合の安定確保[鎌田征之]
4章再評価
再評価で何をみるのか [梅田 誠]
歯周基本治療後、再評価までどのくらいの期間を空けるべきか [梅田 誠]
再評価時に変化がない場合、どう対応するか [梅田 誠]
SRP後、歯周ポケットに改善がみられない場合、歯周外科に移行する基準 [梅田 誠]
5章歯周外科
歯周外科で何を治せるのか [申 基喆]
歯周外科の基本[辰巳順一 申 基喆]
切除療法の定義と種類 [林 丈一朗 申 基喆]
フラップキュレッタージの術式と特徴[辰巳順一 申 基喆]
歯肉弁根尖側移動術[酒井和人]
骨整形と骨切除[酒井和人]
GTR とEMD を使用した再生療法の治療成績 [富田幸代 齋藤 淳]
再生療法の種類と特徴、適応症[色川大輔 齋藤 淳]
6章メインテナンス・SPT
メインテナンスで何をみるのか[沼部幸博]
メインテナンスやSPT はどのくらいの間隔で行うのか [沼部幸博]
メインテナンスとSPT の違い [沼部幸博]
歯肉増殖症への対応[沼部幸博]
患者の心を動かすことの大切さを実感した症例[下條美穂子]
外傷性??合が歯周炎の進行を助長した患者のメインテナンス[大八木孝昌]
広汎型重度慢性歯周炎患者の経過症例[土岡弘明]
7章全身疾患など
歯肉増殖症患者への歯周治療 [村井 治 八重柏 隆]
治りが悪い患者への歯周治療 [村井 治 八重柏 隆]
糖尿病患者への歯周治療[佐々木大輔 八重柏 隆]
認知症患者への歯周治療 [村井 治 八重柏 隆]
血が止まりにくい患者への歯周治療[小方頼昌]
脳血管疾患患者への歯周治療[澁谷俊昭]
歯周炎と心血管疾患[澁谷俊昭]
早産・低体重児出産と歯周病とのかかわり[澁谷俊昭]
対診と紹介状[澁谷俊昭]
column
歯周病とアンチエイジング[若林健史]
歯周基本治療とSPT の主役 [鎌田征之]
歯周病との長い戦い[稲垣伸彦]
「歯周病検査は必要ない」という誤解 [小方頼昌]
おもな国内未承認材料の種類と特徴[鈴木瑛一 齋藤 淳]
FGG の術式と特徴 [林 丈一朗 申 基喆]
CTG の術式と特徴 [申 基喆]
根面被覆 [石川 聡]
インプラント周囲疾患 [芝 多佳彦]
歯周外科を拒む患者への適切な説明[澤辺正規]
歯周外科前の歯科衛生士の役割[佐藤未奈子]
歯周外科準備・外科前の消毒 [熱田 亙]
歯周外科で必要な器具[澤辺正規]
歯周外科のアシスタントワーク [熱田 亙]
歯周外科後の歯周パックは必要か[山脇史寛]
歯周外科後の対応 [川名部 大]
歯周外科直後の注意事項[稲垣伸彦]
歯周外科後の消毒と含嗽剤 [川名部 大]
歯周外科後のブラッシング開始時期[山脇史寛]
歯周外科直後の衛生管理[鈴木浩之]
抜糸のタイミング [林 直也]